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日本病院総合診療医学会・学術総会 徳洲会から6演題 野崎病院中川院長 コロナ治療経験で発表

2020.10.13

日本病院総合診療医学会・学術総会
徳洲会から6演題
野崎病院中川院長 コロナ治療経験で発表

第21回日本病院総合診療医学会学術総会が9月26日から2日間、埼玉県で開催された。テーマは「総合診療が担うヒューマンケア」。徳洲会グループからは一般演題4演題、育成賞候補演題1演題、ポスターセッション1演題の発表があり、このうち野崎徳洲会病院(大阪府)の中川秀光院長は、自院で経験した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療経験を報告した。

八尾病院が最優秀研究論文賞

中川院長は自院のCOVID-19治療経験を報告中川院長は自院のCOVID-19治療経験を報告

一般演題では、中川院長が「COVID-19肺炎の治療経験」と題し発表。同院では許可病床外の部屋を大阪府に要請し、COVID-19肺炎用の隔離病棟として整備、軽症から酸素投与が必要な中等症の患者さんを受け入れた。3~6月の第1波と7~9月の第2波に分けて患者さんの重症度や男女比、検査異常値などの統計をまとめた。

それによると、①全体的に男女比にあまり差はないが、中等症、重症になるにつれ男性が多い、②血液検査では肝機能、アルブミン、LDH(血清乳酸脱水素酵素)、血清Fe、白血球、凝固能に異常を認め、とくに肝機能障害、LDH高値、アルブミン低値、フェリチン高値が重症度に比例した、③PCR法とLAMP法の両方施行例での不一致率は3・7%で、かつCOVID-19肺炎患者さんの8・9%がLAMP法で陰性となり、LAMP法の感度が低いことが示された――などと報告した。

また、第2波ではアビガンやレムデシビルなど効果が期待できる薬剤が使用でき、PCR検査で陰性になるまでの期間が短縮。このうちレムデシビルは入院時もしくは経過で重症例となった患者さんに用いたが、基礎疾患として高血圧、糖尿が多く見られ、これらの症状の頻度は重症度に比例したことも明かした。

最後に再発例にも言及し、「5例の再発例はいずれも10~30代の若年者で、抗体が存在していたにもかかわらず再発した例も2例ありました」と締めくくった。

長見顧問は自院で経験した症例2演題を発表長見顧問は自院で経験した症例2演題を発表

出雲徳洲会病院(島根県)の長見晴彦・総合診療科顧問は2演題発表。1演題目は「膵管(すいかん)癒合不全に合併したアルコール性慢性腹側膵炎の1例」がテーマ。膵管癒合不全とは、背側膵管と腹側膵管の癒合不全で膵管交通異常を来す先天的解剖異常。合併症に急性・慢性膵炎があり、背側膵に発生することが多い。

発表では腹側膵の急性増悪例を示し、「アルコール飲酒により膵石をともなう慢性腹側膵炎のみを発症し、急性増悪したものと推測されます」とまとめた。

2演題目のテーマは「上腸間膜動脈症候群によって惹起(じゃっき)された腸管気腫を伴う門脈気腫症の1例」。門脈気腫症は腸管壊死(えし)などにともない門脈内にガスの存在を認める疾患で、予後不良となる。同症例は、るい瘦にともなう内臓脂肪減少、長期臥床(がしょう)により上腸間膜動脈症候群が発症し、その後に長期間の十二指腸水平脚圧迫により十二指腸・胃気腫症、最終的に門脈気腫が生じたと推測。

育成賞候補演題に選ばれた山田・後期研修医(音声参加)育成賞候補演題に選ばれた山田・後期研修医(音声参加)

「介護施設にいる高齢者で、臥床期間が長く栄養不良の症例は、本症の発症に留意すべきだと考えます」と注意喚起した。

八尾徳洲会総合病院(大阪府)の髙原良典・総合内科医長は「ヨウ素含有咽頭(いんとう)スプレー剤による甲状腺機能低下症の2例」と題し、事前録音した音声で発表した。橋本病ではヨウ素含有量が多い昆布などの過食による甲状腺機能低下症の発症は周知されているが、店頭薬にもヨウ素含有量の多い薬があることは、あまり知られていないと強調したうえで、症例を報告。

同疾患は総合診療外来で遭遇することがあると説明し、「甲状腺ホルモンの補充を開始する前に、昆布の過剰摂取や咽頭スプレー剤使用の病歴聴取が重要と考えます」とアドバイスした。

札幌病院の医師がコロナテーマで育成賞候補演題

育成賞候補演題では、札幌徳洲会病院の山田達也プライマリセンター医師が「COVID-19感染症との鑑別に苦慮した急性白血病の1例」をテーマに事前録音した音声で発表。症例ではCOVID-19が否定できないまま、急性前骨髄球性白血病が強く疑われたが、複数回PCR検査の結果が出るまで血液内科専門病院に転院を待つ間も診断・治療を進め、完全寛解にもち込むことに貢献。

「COVID-19の類似症例で受診する患者さんのなかには、他の重篤な疾患も含まれており、その治療の遅れを防ぐ重要性を再認識する経験でした」と気を引き締めた。

また会期中、同学会雑誌最優秀研究論文賞を受賞した八尾病院の瓜生恭章・内科部長、髙原医長、山本智英・内分泌内科顧問らによる「熱中症と暑気中(あた)り(夏ばて)の一因としての不顕性副腎不全」と題する論文の表彰式が行われた。

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