常勤医着任で診療体制充実 札幌東病院 〝できること〟を増やし地域貢献
2020.9.23
常勤医着任で診療体制充実
札幌東病院
〝できること〟を増やし地域貢献
札幌東徳洲会病院は今年に入り、新たな医師が着任するなど診療体制の一層の充実を図っている。具体的にはPET(陽電子放射断層撮影)センター、形成外科、脳神経外科で、常勤医の確保により既存の設備や環境が活用でき、従来行えなかった診療が実施できるようになった。専門分野が異なる医師の加入で治療の幅も広がるなど、より多くの患者さんを受け入れ地域に貢献していく。
「数少ない地域の資源をフル活用したい」と伊藤センター長
札幌東病院がまず充実を図ったのがPETセンター。1月1日付で伊藤和夫・放射線診断科医師が入職し、センター長に就任した。伊藤センター長は核医学を専門とし、これまで数多くのPET検査画像を読影。道内有数のがん治療を手がける前勤務先では、年間約2400件の読影を手がけたという。最も変わった点は、院内でPET検査の画像が読影できるようになったことだ。同院では、PET装置を主にがんの検査や検診に使用。PET検査は、放射線検査はもちろん、同じ核医学検査でも他とは読影手法が異なることから、院内に読影できる医師がいなかったため、以前は外部に検査画像の読影を依頼していた。
そのため、結果が届くまで数日かかり、患者さんに後日来院してもらったり、オーダーした医師に結果を伝えるまでに時間を要したりしていた。
伊藤センター長の着任以来、検査当日に結果を伝達。スピーディーな対応に、他科の医師や患者さんの満足度が向上しているという。
香山部長は他科と協力し患者さんのQOL向上目指す
さらに、他院からの読影依頼にも対応。地域の医療機関に周知しようとした矢先にコロナ禍となり、今のところ数は少ないが、状況が落ち着けば他院に赴き連携を働きかける意向だ。「地域でPETを有する施設は限られています。地域はもちろん、当院の運営にも貢献できるよう資源を活用していきたい」と意気込む。
4月1日には香山武蔵・形成外科部長が着任。ここ2年は非常勤医師による外来のみだったが、入院手術なども行えるようになった。研修医時代を八尾徳洲会総合病院(大阪府)で過ごしており、大学の医局人事で15年ぶりに徳洲会で働くこととなった。
現在、傷痕や火傷痕、皮下組織のできもの、眼瞼(がんけん)下垂、顔面骨折の治療などを行うかたわら、整形外科と協力し下肢の切断などに対応。患者さんのQOL(生活の質)向上の観点から、部分的な切断、軟膏、陰圧閉鎖療法(創傷面を陰圧に保ち創部を管理する方法)など保存的治療を心がけているという。
循環器内科の血行再建に関する実績が高いことに触れ、今後、同科と協力して外科的アプローチで下肢救済も視野に入れる。「形成外科医として地域のさまざまなニーズに柔軟に対応していきたい」と意欲を見せている。
同じく4月1日に脳神経外科に嵯峨健広医長が着任。佐藤正夫・同科部長と合わせ、同科は常勤医3人体制となった。マンパワーの増強はもちろん、とくに大きなメリットは診療の幅が広がったことにある。
佐藤部長は開頭手術がメインであるのに対し、嵯峨医長は日本脳神経血管内治療学会専門医資格をもち、血管内治療を数多く経験。これにより、脳梗塞に対し血栓をカテーテルで吸引したり、ステントで取り出したりする治療(血栓回収療法)や、脳動脈瘤(りゅう)が破裂しないようにカテーテルを用いて瘤をコイルで詰める治療(コイル塞栓術)が行えるようになった。
佐藤部長(右)と嵯峨医長は「互いの専門分野を生かし良い医療を提供したい」
「たとえば、血栓回収療法は脳卒中の治療でスタンダードになりつつあります。救急隊から、そうした新しい治療ができるのか尋ねられたこともありました。治療の選択肢が増えたことで、より多くの方々に対応できるようになったのはうれしい」と佐藤部長。事実、血管内治療の件数は現時点で昨年を上回っている。嵯峨医長は「新しい環境に刺激を受けています。お互いの強みを生かし、良い緊張感をもって地域のために働きたい」と決意を示す。
このように診療体制の充実とともに、同院は引き続き新型コロナウイルスの感染対策にも腐心。玄関に検温ブースを設けたり、疑いのある方が見られた場合は必要に応じて全館放送で動線を仕切ったり、個室に隔離したりしている。岸郁夫・事務部長は「今後も〝安心して受診できる病院〟と地域から信頼されるように努力します」。