パーキンソン病 MRgFUS 保険適用拡大 湘南藤沢病院が臨床研究
2020.9.23
パーキンソン病
MRgFUS 保険適用拡大
湘南藤沢病院が臨床研究
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)が臨床研究を実施した薬剤抵抗性振戦とジスキネジアを呈するパーキンソン病に対するMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)が、9月1日に保険適用となった。
治療中に患者さんの手の震えの様子を確かめる伊藤部長(左から2人目)
MRgFUSは900~1000本の超音波を一点に集中し、標的部位を熱凝固する治療。0・1㎜単位で凝固巣の位置を決定し、直径数㎜ときわめて微小な凝固巣をつくることから、非常に精度の高い操作が求められるが、MRI(磁気共鳴画像診断)で標的部位の位置と温度をリアルタイムにモニタリングし、これを可能にしている。同治療は既存の治療と比較し、外科的侵襲がほとんどないのがメリット。治療効果や有害事象を確認しながら治療を進めるため、治療の確実性・安全性が高く、患者さんが受ける恩恵は大きい。
同院では2017年3月に同治療の臨床研究を開始し、本態性振戦に対する治療経験を積み重ねるとともに、同年4月には振戦優位型パーキンソン病に対する治療を日本で初めて実施。ジスキネジアを呈するパーキンソン病に対する治療も3例実施した(いずれの内容も複数の和文論文・英文論文で発表)。
伊藤恒・脳神経内科部長は「パーキンソン病治療の基本は薬物治療ですが、進行期の症例では薬物によって十分な治療効果を得ることが難しいケースがあるため、適用拡大はありがたいことです」と、うなずきながらも、十分な薬剤調整がされていない症例や、本態性振戦・パーキンソン病以外の症例は保険診療の対象にならないことから、「〝薬剤抵抗性が確認されていること〟のみならず、〝正しく臨床診断できていること〟を重視し治療にあたりたいと思います」と気を引き締めている。
また、同院では医師、看護師、診療放射線技師、事務職員で構成するチームがMRgFUSを行っているが、振戦優位型パーキンソン病の治療後に運動緩慢・歩行障害が一過性に増悪することがあるため、治療チームに理学療法士を加え安全性を高めている。