岸和田病院尾浦副院長 乳腺外科を開設 医療の質向上と後進育成に力
2020.8.19
岸和田病院尾浦副院長 乳腺外科を開設 医療の質向上と後進育成に力
岸和田徳洲会病院(大阪府)は尾浦正二・副院長兼乳腺外科部長の入職にともない乳腺外科を開設した。乳腺専門医による診療は近年、週1回の外来のみだったが、これにより外来の回数増や入院医療の提供が実現。同院は乳がんを中心とする乳腺診療や大学での教育といった尾浦副院長の豊富な経験を生かし、診療の充実と後進育成に期待を寄せる。
「培った経験・知識を生かし貢献したい」と尾浦副院長
尾浦副院長は和歌山県立医科大学を卒業後、30年以上にわたり同大学附属病院と分院に勤務。外科専門医、乳腺専門医として乳がんを中心に診断、手術、薬物療法、研究など乳腺にかかわる診療に従事してきた。このうち乳がんの治療では、温存療法や「自家組織拡大広背筋皮弁による乳房再建術」(背中から腰のあたりまで患者さん自身の脂肪と筋肉を用いて、手術で変形・喪失した乳房をできる限り再建する方法)などを多く経験。診断や治療に関するさまざまな論文も数多く執筆し、骨転移や手術療法に関する書籍(単著)も上梓している。診療のかたわら、教育にも注力。同大学で講師、准教授として教鞭(きょうべん)を執り、乳腺専門医を育成したり、講演会や研究会を通じて和歌山県内の乳がん検診・治療に携わる医師の診療スキル向上に努めたりした。
こうした実績を重ね、今年に入り岸和田病院に入職。当初は外科の一員として活動する構想もあったが、「より患者さんにわかりやすい」と乳腺外科を標榜(ひょうぼう)することとなった。
現在、尾浦副院長は外来を中心としながら、若手の外科医師と連携してともに診断や手術などに対応。「環境に慣れ、“さあこれから”という時期に新型コロナウイルスの感染拡大で手術が延期になるなど、思うように活動できませんでした。最近になってようやく診療する機会も増え、乳房再建を含むさまざまな手術を行っています」と現状を説明する。今後、診療をはじめ、超音波検査の経験も豊富なことから、検診・健診への貢献も視野に入れているが、尾浦副院長がとくに意欲を見せているのが後進育成だ。
尾浦副院長は「当院の若手医師はアクティビティが高く、本当に臨床レベルも高い。ただ、いろいろな症例を経験し対応力はあるものの、なぜそうするのかをもっと論理的に考えることが必要。それが医療の質を一層高めることにつながります」と指摘。「良い医師をひとりでも多く育てる。それが自分の存在意義だと思っています」と意欲を燃やす。
手術では自身が行う様子を見学させ、その後はフォローしつつ若手医師に経験させたり、英語論文も含め論文指導を行い数多く出版・アクセプト(受理)されたりしているという。教育的な側面での尾浦副院長の活躍に、岸和田病院が寄せる期待も高い。
尾浦副院長は来年にも日本乳癌学会認定施設の申請を計画。「認定されれば、乳がん診療を学びたいと意欲のある若い医師が集まる」と明かし、「良い医療を提供するのは当たり前。ただ、そのためには良い医師を多く育てることが欠かせません。和歌山同様、岸和田でも培った経験・知識を生かし、診療と教育の両輪から地域のお役に立てるように努力します」と決意を見せる。