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生駒病院遠藤院長 断らずに無輸血手術 安全重視“引き返せる手術”考案

2020.8.11

生駒病院遠藤院長 断らずに無輸血手術 安全重視“引き返せる手術”考案

宗教上の理由から輸血拒否の立場を取っている「エホバの証人」の患者さんに対する無輸血手術を、生駒市立病院(奈良県)の遠藤清院長(外科)は断らずに長年取り組んでいる。県内だけでなく大阪府、京都府、三重県など広域から遠藤院長を頼って来院する患者さんが後を絶たない。

「若手医師を育成していきたい」と遠藤院長「若手医師を育成していきたい」と遠藤院長

無輸血手術には「患者さんの意思を尊重し、たとえいかなる事態になっても輸血をしない」絶対的無輸血と、「患者さんの意思を尊重して可能な限り無輸血に努力するが、『輸血以外に救命手段がない』事態に至った時には輸血をする」相対的無輸血がある。遠藤院長は絶対的無輸血手術にも応じている。なお徳洲会グループは2015年、宗教的輸血拒否に適切に対応するためのガイドラインを策定、患者さんの自己決定権を尊重することや対応基準などを定めた。

「当院では整形外科、脳神経外科、心臓血管外科の各疾患を除き、幅広く無輸血手術を実施しています。ただし膵臓(すいぞう)がんや肺がん、喉頭(こうとう)がんなど、大きな手術の場合は出血量が多くなるリスクがありますので、出血を抑える工夫がいります。安全性を重視し、途中で中断し引き返せる手術法を考案、実践してきました」(遠藤院長)

たとえば膵臓がんに対する膵頭(すいとう)十二指腸切除術では、臓器や血管をすべて剝離(はくり)した後に一気に切離する。こうした技術や発想を支えるのは解剖に対するしっかりとした理解だ。そのため遠藤院長は、手術記録として手書きの解剖図を作成することを大切にしている。

また、許容できる出血量として、これまでの経験から(ヘモグロビン値[g/㎗]ー1)×100㏄を目安とし、術前に値が低い場合は鉄剤などを投与。少なくとも10g/㎗程度まで貧血を改善してから手術に臨む。

遠藤院長は「今後、無輸血手術の技術などを若手医師に伝えるとともに、幅広い臓器の手術ができる外科医を育成していきたい」と意欲的だ。

遠藤院長が手術記録として作成した手書き解剖図遠藤院長が手術記録として作成した手書き解剖図

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