伊藤・湘南藤沢病院部長 ALS臨床研究終了 横隔膜ペーシング論文6本
2020.8.11
伊藤・湘南藤沢病院部長 ALS臨床研究終了 横隔膜ペーシング論文6本
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の伊藤恒・神経内科部長は、国内初実施となる筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する横隔膜ペースメーカー植え込み術(横隔膜ペーシング)に関し、短期・長期評価を報告した論文を6本発表し、臨床研究を締めくくった。
「今後の臨床研究の糧に」と伊藤部長
横隔膜ペーシングは横隔膜に電気刺激を与えて人工的に横隔膜を動かし、呼吸運動を補助する治療法。一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫・前理事長から同治療に関する臨床研究の提案を受けた同院の亀井徹正総長や伊藤部長らは、同治療を開発した米ケース・ウエスタン・リザーブ大学のレイモンド・オンダース教授の指導の下、2014年1月から5例を対象とした臨床研究を開始した。この間、伊藤部長は国内外の学会で発表したり、オンダース教授と意見交換したりしながら患者さんをフォロー。ペーシング開始から人工呼吸器導入または死亡までの最長期間は48・7カ月となり、同治療とBiPAP(非侵襲的二相式補助換気療法)を併用することで、より長期的な予後を得ることができた。重篤な有害事象はなかった。
だが、臨床研究の期間中に英国とフランスから同治療に対する否定的な結果が報告されたこともあり、同治療は保険収載には至らなかった。
伊藤部長は同治療の内容や臨床研究の結果に関する和文、英文の論文をそれぞれ3本ずつ発表。なかでも最初に発表した和文論文は、15年度の日本神経治療学会論文賞に選出。「今回の臨床研究では対象が5例と少なく、ペーシング(-)群との比較ができないという限界もありました」と話すも、「全症例のフォローを終了し、最終報告となる英文論文も日本神経学会の英文誌に公開されました。私たちが得た知見のすべてを報告し、臨床研究を締めくくることができました。この経験は今後の臨床研究の糧になるでしょう」。本臨床研究に関する伊藤部長の論文の請求は湘南藤沢病院総務課まで。