湘南鎌倉病院 地域がん診療連携拠点病院に指定 専門的で質の高いがん医療を提供
2020.8.4
湘南鎌倉病院 地域がん診療連携拠点病院に指定 専門的で質の高いがん医療を提供
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けた。同拠点病院は、専門的で質の高いがん医療を提供する役割を担うとともに、地域の医療機関との連携拠点となる病院。指定を受けるには、診療体制や診療実績などに関し、国が定めた多岐にわたる要件をクリアする必要がある。医療機関が都道府県に申請し、都道府県知事からの推薦に基づき厚生労働相が指定を行う。徳洲会グループでは宇治徳洲会病院(京都府)に次ぎ2病院目。陽子線治療やBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)など高度ながん医療の実施を計画する先端医療センターの開設を2021年4月に控える湘南鎌倉病院は今後、より一層、がん医療の充実・強化に取り組み、患者さんに貢献していく考えだ。
徳洲会グループで2病院目
「質の高いがん医療を提供していきたい」と下山センター長
地域がん診療連携拠点病院指定書
国民の2人に1人が、がんに罹患(りかん)し、3人に1人が、がんで亡くなっている。国は07年4月に施行した「がん対策基本法」などに基づき、がん医療の充実を推進。その一環で、全国どこでも質の高いがん医療を提供できるよう、がん医療の均(きん)てん化を図るため、高度ながん医療に取り組む医療機関を「都道府県がん診療連携拠点病院」や「地域がん診療連携拠点病院」などとして指定、整備を進めてきた。原則として、都道府県がん診療連携拠点病院は各都道府県に1カ所、地域がん診療連携拠点病院は都道府県が医療計画で定める「がんの医療圏」ごとに1カ所ずつ指定。
湘南鎌倉病院は15年、「神奈川県がん診療連携指定病院」して指定を受けた。これは、地域がん診療連携拠点病院と同等の機能を有する病院に対し、神奈川県が独自に設けた指定制度だ。
同院オンコロジーセンターの下山ライ・センター長兼外科部長は「神奈川県がん診療連携指定病院の指定を受けた時から、地域がん診療連携拠点病院を目標にしてきました。15年以降、緩和ケア外来の開設や緩和ケアチームの確立、緩和ケア研修の実施、がん相談支援センターの強化、地域連携パスの充実など、これまで取り組みが弱かった部分の強化を図り、万全の体制で申請、無事に指定を受けることができました」と経緯を説明する。
続けて「徳洲会の病院は救急・急性期医療のイメージが強いですが、高度ながん医療を実践していると公に認められたことは、とても大きな意義があると考えます。国立がん研究センターが一般の方向けに情報発信しているホームページ(がん情報サービス)でも当院が掲載されるようになりました。これを機に、がん医療への取り組みをさらにピーアールしていきたい」と意気込みを語る。
同院は、専門的で集学的(手術療法、薬物療法、放射線療法)ながん医療を行っていることに加え、大規模な総合病院であることも大きな強み。他の疾患を有する高齢のがん患者さんは多く、たとえば心疾患や腎不全などを併発している患者さんも断らずに受け入れる方針。
同院は21年4月に湘南鎌倉先端医療センターの開設を予定している。徳洲会グループ初の陽子線治療など高度医療に取り組む計画だ。地上4階・地下1階建て、延床面積は約1万2500㎡の予定。先進的な臨床・研究施設として、陽子線治療やBNCT、RI(放射性同位元素)内用療法、PET(陽電子放射断層撮影)を用いた創薬研究・支援などに取り組む意向。高度な医療を取り入れ、新たな治療の選択肢を提供していきたい考えだ。
化学療法や放射線治療などの標準治療も積極的に推進する。このほか、再生医療や健康診断(疾病の早期発見)の充実にも取り組む。
先端医療センターの開設に向け工事が進捗(写真手前のクレーン付近、7月中旬に撮影)
陽子線治療は、狙った病変に強い線量を効率良く集中し、正常組織へのダメージを軽減できるのが特徴だ。18年4月の診療報酬改定で保険適用が拡大し、現在、頭頸部(とうけいぶ)がん、骨軟部がん、前立腺がん、小児がんの一部が保険診療となっている。BNCTは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素化合物を利用した治療法。ホウ素化合物を静注して中性子を照射するとα線が発生し、がん細胞を内部から破壊する。「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」を適応疾患として、今年6月1日付で保険診療として実施できるようになった最新の治療法だ。標準治療を終え治療の選択肢がなくなった“がん難民”の方々の受け皿となれる施設を目指す。
今後は、がんゲノム(全遺伝情報)医療の強化を視野に、がんゲノム医療連携病院の指定を目標に据えている。