湘南藤沢病院 対側治療スタート MRgFUSで条件付き
2020.7.14
湘南藤沢病院 対側治療スタート MRgFUSで条件付き
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は、薬物抵抗性の本態性振戦に対するMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の対側治療を4月にスタートした。これまで同治療は片側のみしか行っていなかったが、4月1日に条件付き(前回の治療から6カ月以上経過など)で解禁。
患者さんに専用フレームを付ける伊藤部長(中央)
薬物抵抗性の本態性振戦に対するMRgFUSは昨年6月に保険収載。これまでは片側のみしか行えず、患者さんは利き手や症状のひどいほうを選び治療を実施。しかし、治療を終えた患者さんからは「(利き手である右手を治療して)右手の振戦が治まったが、左手の振戦が気になる」などの声が聞かれることもあった。こうした状況下、今年4月1日に条件付きで対側治療が解禁された。同院での1例目は4月下旬に実施。対側治療では仮性球麻痺(きゅうまひ)による構音障害や嚥下(えんげ)障害が生じる可能性があるため、言語聴覚士を治療チームに加えた。これは全体の指揮を執る伊藤恒・神経内科部長の「生じ得る有害事象を念頭に置いて治療前から十分に評価を行い、異常の早期発見・早期対応につなげることが重要」という考えによる。
また、対側治療では初回治療の照射パラメーターや到達温度を参考に治療計画を立てることができるため、症例ごとに適切な治療を行うことが可能。伊藤部長は「初回治療時にターゲットの温度が上がりすぎる傾向があった場合、対側治療時にわざと照射エネルギーを絞るなど工夫ができます」と強調する。
対側治療1例目の患者さん(初回治療で右手の振戦を治療)は、「対側治療で左手の振戦も治まり、スムーズに食事ができるようになりました」と笑顔。伊藤部長は「片側を治療しても必ずしも患者さんが満足していないというデータがあり、これは対側の振戦が残っているからではないかと考察していました。安全に注意しながら、希望する患者さんには対側治療を行っていこうと考えています」と展望している。