乳がんタモキシフェン療法 多施設共同試験が海外で評価 徳洲会オンコロジープロジェクトの一環 東京西病院も参加し貢献
2020.6.15
乳がんタモキシフェン療法 多施設共同試験が海外で評価 徳洲会オンコロジープロジェクトの一環 東京西病院も参加し貢献
徳洲会グループのオンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環として、東京西徳洲会病院が症例登録を行うなど参加した「乳がんホルモン療法に用いられる治療薬タモキシフェンの遺伝子変異に基づく投与量」をテーマとする多施設共同試験が海外で高い評価を得た。国公立病院や大学病院など全国54施設で行い、「遺伝子変異に基づく用量の個別化は不要」とする論文が米国臨床腫瘍学会機関誌「Journal of Clinical Oncology」(JCO)に掲載され高く評価された。
「高く評価されたことは嬉しい」と佐藤副院長
女性ホルモンの分泌や働きを薬で抑えたり妨げたりする治療方法がホルモン療法。タモキシフェンはホルモン療法薬のひとつで、主に乳がん手術後の再発予防や転移がんの進行を抑える目的で使用する。ホルモン受容体に結合することで増殖を抑え込むが、タモキシフェンそのものが効果を発揮するわけではない。患者さんが服用後、肝臓にあるCYP2D6(シップツーディーシックス)という酵素がタモキシフェンを分解し、代謝産物としてエンドキシフェンが生成。エンドキシフェンはタモキシフェンに比べ受容体に結合する力が高いと言われ、よりがん治療に有効となる。
ただし、CYP2D6の活性には遺伝的な差があり、アジア地域、とくに日本人の場合、遺伝的に活性が低い人が多いとされている。東京西病院の佐藤一彦・副院長兼包括的がん診療センター長は「日本人は欧米の方に比べてCYP2D6の遺伝変異の頻度が高く、なかには日本人で遺伝的にCYP2D6の活性が低い人は約7割に上るという声もあります」と説明。加えて「CYP2D6の活性が低いと、タモキシフェンによる治療効果は得られない可能性が懸念されており、日本人では投与量を調整する必要性があるのではないかと議論されてきました」と指摘する。
日本人にとっての長年の大きな問題に一石投じる
こうしたなか、国立がん研究センターや慶應義塾大学、理化学研究所、東京大学医科学研究所など全国54の施設が共同で行う臨床試験「ホルモン受容体陽性転移・再発乳がんに対するタモキシフェンのCYP2D6遺伝子型に基づく個別化投薬と固定用量の比較研究(TARGET-1 study)」が12 年にスタート。徳洲会グループもオンコロジープロジェクトの一環として参加することとなり、東京西病院が症例登録を行った。
研究は、CYP2D6の活性が低い患者さんのタモキシフェン服用量を増やすことで、エンドキシフェンの生成量を上げ、治療効果を評価。ホルモン受容体陽性乳がんが転移・再発した患者さんが対象。初回の治療前に採血による遺伝子検査を行い、変異によりCYP2D6の活性が低い患者さんを2群に分け、一方の群には20㎎(標準的な用量)、もう一方の群には40㎎を投与し、治療開始から6カ月経過した時点での患者さんの状態、エンドキシフェンの血中濃度や増悪がない期間などを評価した。
12年12月から16年7月まで登録患者数は186人(東京西病院は9人)。そのうち136人に活性が低い遺伝子が見られ、ランダムで70人に40㎎、66人に20㎎投与した結果、血清中のエンドキシフェン濃度では20㎎群より40㎎群のほうが有意に高かったものの、両群で患者さんの状態変化に差はなく、タモキシフェンの用量を増やしても治療効果の向上にはつながらなかった。研究をまとめた論文では「CYP2D6の遺伝子変異に基づく用量個別化は不要」と結論付けている。
この論文が米国臨床腫瘍学会に受理され、今年2月20日付で同学会の機関誌JCOに掲載。編集者から「前向き臨床試験(患者さんの協力の下、新たにデータを収集し検証する研究)による、よりハイレベルなエビデンス」と紹介された。
佐藤副院長は「恐らく、このテーマで前向きな研究は世界初。結果的にタモキシフェン増量による治療効果の向上にはつながりませんでしたが、約20年に及ぶ乳がん領域での課題、日本人にとっての大きな問題に一石を投じた意義は大きいと思います」と笑顔。「最終的に形となり高く評価されたことは嬉しいですし、何より取り組んだ徳洲会にとって、またご協力いただいた患者さんにとっても良かったと思います」と胸をなでおろす。
佐藤副院長は「医療が進歩した現在、乳がん再発の一次薬物療法は主に分子標的治療。タモキシフェンが、試験で行ったような再発治療に対する使われ方は少ない」と指摘しながらも、「今回の試験デザインは、とても重要で、今後に役立つはず。徳洲会グループが一層がん治療に貢献できるように努力します」と意気軒高だ。
研究は、CYP2D6の活性が低い患者さんのタモキシフェン服用量を増やすことで、エンドキシフェンの生成量を上げ、治療効果を評価。ホルモン受容体陽性乳がんが転移・再発した患者さんが対象。初回の治療前に採血による遺伝子検査を行い、変異によりCYP2D6の活性が低い患者さんを2群に分け、一方の群には20㎎(標準的な用量)、もう一方の群には40㎎を投与し、治療開始から6カ月経過した時点での患者さんの状態、エンドキシフェンの血中濃度や増悪がない期間などを評価した。
12年12月から16年7月まで登録患者数は186人(東京西病院は9人)。そのうち136人に活性が低い遺伝子が見られ、ランダムで70人に40㎎、66人に20㎎投与した結果、血清中のエンドキシフェン濃度では20㎎群より40㎎群のほうが有意に高かったものの、両群で患者さんの状態変化に差はなく、タモキシフェンの用量を増やしても治療効果の向上にはつながらなかった。研究をまとめた論文では「CYP2D6の遺伝子変異に基づく用量個別化は不要」と結論付けている。
この論文が米国臨床腫瘍学会に受理され、今年2月20日付で同学会の機関誌JCOに掲載。編集者から「前向き臨床試験(患者さんの協力の下、新たにデータを収集し検証する研究)による、よりハイレベルなエビデンス」と紹介された。
佐藤副院長は「恐らく、このテーマで前向きな研究は世界初。結果的にタモキシフェン増量による治療効果の向上にはつながりませんでしたが、約20年に及ぶ乳がん領域での課題、日本人にとっての大きな問題に一石を投じた意義は大きいと思います」と笑顔。「最終的に形となり高く評価されたことは嬉しいですし、何より取り組んだ徳洲会にとって、またご協力いただいた患者さんにとっても良かったと思います」と胸をなでおろす。
佐藤副院長は「医療が進歩した現在、乳がん再発の一次薬物療法は主に分子標的治療。タモキシフェンが、試験で行ったような再発治療に対する使われ方は少ない」と指摘しながらも、「今回の試験デザインは、とても重要で、今後に役立つはず。徳洲会グループが一層がん治療に貢献できるように努力します」と意気軒高だ。