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湘南鎌倉病院 看護師の特定行為研修を開始 超高齢社会での医療ニーズ増に対応

2020.5.19

湘南鎌倉病院 看護師の特定行為研修を開始 超高齢社会での医療ニーズ増に対応

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は4月、看護師の特定行為研修を開始した。研修生は同院から3人、東京西徳洲会病院から2人の計5人。今回、研修対象になるのは「術中麻酔管理領域」パッケージで、6区分8行為を1年かけて研修する。徳洲会で同研修に取り組むのは南部徳洲会病院(沖縄県)、札幌徳洲会病院に次ぎ3施設目。

徳洲会グループで3施設目

「今後は看護師に任せる業務が増えます」と園田部長(右)、八木沼部長「今後は看護師に任せる業務が増えます」と園田部長(右)、八木沼部長

厚生労働省は2015年10月、「特定行為に係る看護師の研修制度」を創設した。同研修制度は医師(歯科医師を含む)の診療を補助する行為を特定し、手順書に沿って同行為を実施できる看護師を計画的に養成していくのが目的だ。

この背景にあるのが団塊の世代が75歳以上を迎える「2025年問題」。高齢化が進み、医療の高度化・複雑化が進むなか、質が高く安全な医療を提供するためには、チーム医療の推進が必要となる。成功の鍵は多職種それぞれが高い専門性を発揮し、互いに連携して適切な医療を提供すること。このなかで看護師は患者さんの状態を見極め、必要な医療サービスを適切なタイミングで届ける役割を担い、急性期医療から在宅医療を地域で支えていくための要になることが期待される。

湘南鎌倉病院でも患者さんの高齢化が進む。19年度には救命救急センター(救急搬送、ウォークイン含む)に約4万3000人の患者さんが来院したが、このうち約4割が70歳以上、また同院で行った手術は約5割が70歳以上の高齢者だった。

こうしたなか、同研修の導入を企図した園田清次郎・麻酔科部長は「超高齢社会の進展で、地域の医療ニーズは1割以上増えることが予想されます。地域の医療資源は限られているため、近隣の医療機関で対応できなかった患者さんが、当院に押し寄せる可能性があります。こうした状況に対応するためには、今のうちから準備しておく必要があります」と明かす。

八木沼正子・看護部長も医療ニーズが増大するなか、地域のなかで同院の役割がさらに大きくなると考えており、「優れた看護師を増やすことは急務です。学んで、知識を得て、実践力を高めることで、医師をしっかりとサポートできるようになります。ここに新たな仕事へのやりがいも生まれます」と、同研修の必要性を訴える。

まず術中麻酔管理領域

eラーニングを受ける湘南鎌倉病院の研修生eラーニングを受ける湘南鎌倉病院の研修生

特定行為は21区分38行為ある。厚労省は19年4月に「在宅・慢性期領域」、「外科術後病棟管理領域」、「術中麻酔管理領域」の3領域、加えて同年10 月に「救急領域」をそれぞれパッケージ研修として整備すると通知。実施頻度が高い特定行為をパッケージ化することで、より研修を受けやすくするのが狙いだ。

このうち同院では、麻酔科医の人手不足と今後の手術件数増加の見込みを考え、研修対象として「術中麻酔管理領域」パッケージを選択。園田部長は手術前の麻酔導入と最後の抜管は医師が行うが、その間の麻酔管理を医師の手順書に基づき看護師が行うことで、業務の効率を上げることを想定している。

八木沼部長は「今後は麻酔科の医師が足りずに手術ができないケースも出てくると思います。こうした場合に看護師がサポートすることにより、スムーズに手術日程を組むことができれば、医師、看護師、患者さんの三者にとって良い結果になります。『働き方改革』にもつながるのではないでしょうか」と笑顔。

研修項目には共通科目と区分別科目があり、それぞれeラーニングによる講義を受けた後、演習(モデルを使った実践を想定した訓練)や実技試験(OSCE)などを経て、実習(ベッドサイドで行う訓練)および修了試験を行い、すべての科目で合格したら研修修了となる。

同研修には湘南鎌倉病院から3人、東京西病院から2人が参加し、東京西病院は協力施設として登録。研修では、まず湘南鎌倉病院、東京西病院の研修生は、それぞれの病院でeラーニングを実施、その後、講師が指導する演習は湘南鎌倉病院で受け、実習は再度それぞれの病院で受ける予定。症例数の確保や指導医の負担などを考え、このような流れにした。

また、同院では現在、「外科術後病棟管理領域」と「救急領域」のパッケージも厚労省に申請準備中で、これが認定されれば、10月に研修を開始する計画。4月に開始した「術中麻酔管理領域」と半年ずらすことで、eラーニングを行う場所を確保、指導医の負担も軽減する考えだ。

急性期病院にこそ必要

こうした計画について園田部長は「38の特定行為を見ると、急性期に必要な行為が多いことがわかります。このなかから、まずは『術中麻酔管理領域』、加えて2つのパッケージで研修を行うことは、急性期病院として意味のあることだと考えます」と強調。さらに「その後は、病院としての必要性を考えながら、研修を行う区分を増やしていきたい。たとえばPCPS(経皮的心肺補助装置)やペースメーカーの管理といった集中治療の分野にはニーズがあるように思います」と展望する。

研修後の運用を考えることも必要だ。特定行為は医師による手順書に基づいて行う。そのため医師がチーム医療のなかで、どのように同研修を修了した看護師と連携していくかを考えていかなければならない。同院では現在、診療看護師(NP)のための手順書などを見直しているところで、これらが特定行為研修を修了した看護師にも活用できることから早めに整備していく。

園田部長は「今回の研修は、本人の意思でエントリーした看護師が集まりました。それだけでなく、当院や東京西病院以外のグループ病院やグループ外の病院からも希望者があったほどです。やる気のある看護師が多いことは、とても心強く感じます。今後はチーム医療のなかで、看護師に任せる業務が増えてくるのではないでしょうか」と期待を寄せる。

八木沼部長は「今回受ける看護師以外にも、外部で特定行為研修を終えた看護師もいます。ただ特定行為を行うだけではなく、チーム医療の一員として、看護の視点を加えた質の高いサポートをしていけたら良いと思います」と意欲的だ。

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