和泉医療センター 生体腎移植1例目を実施 質の高い移植医療提供目指す
2020.5.12
和泉医療センター 生体腎移植1例目を実施 質の高い移植医療提供目指す
和泉市立総合医療センター(大阪府)は1例目の生体腎移植を実施した。これまで大阪府南部(堺市や富田林市以南)で腎移植を実施できる施設は大学病院1カ所に限られていたが、新たに和泉医療センターが開始したことで、地域の移植医療体制が強化された。地域の患者さんにとっては、より身近な医療機関で腎移植術を受けられるようになり朗報と言えよう。同院は質の高い移植医療を提供し、今後、献腎移植(死体腎移植)も手がけられるよう、日本臓器移植ネットワークの献腎移植の施設認定を目指す。
大阪府南部で2番目の腎移植施設
西岡・特任病院長(右)と林部長
「初尿がでました」――。2月27日午後零時45分、和泉医療センターの手術室に響き渡った。この日、同院は1例目の生体腎移植を実施。初尿はドナー(臓器提供者)から摘出しレシピエント(臓器受給者)に移植した腎臓が、体内で機能し始めたことを示す大切なサインだ。泌尿器科の林泰司部長が執刀医を務め、西岡伯・特任病院長をはじめ泌尿器科スタッフ、手術室スタッフ、麻酔科医など腎移植チームが一丸となり移植術に取り組んだ。
レシピエントは30代男性で、ドナーは60代の父親。レシピエントは糸球体腎炎によって慢性腎不全となり、2カ月ほど前に透析導入となっていた。
同日午前9時にドナーが手術室に入室し、腹腔鏡(ふくくうきょう)下でふたつある腎臓の片方を摘出する手術を開始。その後、隣の手術室でも移植に向けレシピエントの手術をスタート。
ドナー腎の尿管、腎動静脈を剝離(はくり)したうえで結紮(けっさつ)・切離して摘出。レシピエントのいる手術室に持ち込み、シャーベット状に凍らせた生理食塩水にガーゼを敷き、その上に載せてトリミング(腎臓の表面についた脂肪を取り除いたり、血管を吻ふん合ごうしやすいように整えたりする作業)を実施。手際よくトリミングを終え、丁寧にドナー腎とレシピエントの尿管や膀胱(ぼうこう)、動静脈の吻合を行った。腎動脈のクランプ(血流を遮断するための鉗子(かんし))を開放し、阻血していた血流を再開。その8分後に初尿を確認できた。
腎移植チームが一丸となり手術を完遂
最後に、吻合部から漏れがないか確かめたり、移植した腎臓の血流をエコーで確認したりしたうえで、手術創を閉鎖し腎移植術を無事に終了した。術後の経過は良好で、術後約3週間で退院した。西岡・特任病院長は「ドナーから提供された腎臓の状態がとても良く、手術手技も適切に行えました。その結果、すぐに初尿も確認できました。1例目としては想定以上に円滑に手術ができたと思います。手術にかかわったすべてのスタッフのおかげです」と振り返る。
献腎移植の実施も視野
林部長は「大阪府南部では、これまで腎移植を手がける施設は大阪狭山市にある近畿大学病院のみでした。和泉医療センターは、腎移植を希望される地域の方々が身近な医療機関で移植を受けることができるよう、移植術を開始しました」とアピール。今まで移植希望者は近畿大学病院や大阪市内の病院に紹介していたが、和泉医療センター内で移植術まで完結できる体制が整った。
林部長は2017年4月、西岡・特任病院長は18年4月に和泉医療センターに着任。それまでふたりとも近畿大学病院に在籍し、多くの腎移植に取り組むなど豊富な経験をもつ。これまで約350例の移植経験がある西岡・特任病院長は近畿大学医学部泌尿器科学教室臨床教授、約200例の経験がある林部長は同教室准教授を兼任している。
移植に向け具体的に動き出したのは西岡・特任病院長が着任してからだ。「徳洲会グループの支援により必要な資機材をそろえ、手術室や透析にかかわるさまざまな職種向けに勉強会を開くなど準備してきました。2年近くかかりましたが、1例目を実施できたことをとても嬉しく思います。麻酔科の先生や看護師、薬剤師、移植コーディネーター、管理栄養士など多職種の協力があって初めてできる医療ですので、皆さんに感謝しています」と西岡・特任病院長と林部長は口をそろえる。手術の1週間前からはシミュレーションを行って段取りを確認するなど、入念に準備してきたという。
移植医療をめぐってはドナー不足が大きな問題となっている。年間の腎移植数(生体腎+ 献腎)は17年に1742例。これに対して献腎移植希望登録数は同年末で1万2449人に上る。そのため臓器提供に対する理解を深める啓発活動にも積極的に取り組んでいく。生体腎移植に加え、今後は献腎移植も手がけられるよう、日本臓器移植ネットワークの献腎移植の施設認定を目指す考えだ。
林部長は2017年4月、西岡・特任病院長は18年4月に和泉医療センターに着任。それまでふたりとも近畿大学病院に在籍し、多くの腎移植に取り組むなど豊富な経験をもつ。これまで約350例の移植経験がある西岡・特任病院長は近畿大学医学部泌尿器科学教室臨床教授、約200例の経験がある林部長は同教室准教授を兼任している。
移植に向け具体的に動き出したのは西岡・特任病院長が着任してからだ。「徳洲会グループの支援により必要な資機材をそろえ、手術室や透析にかかわるさまざまな職種向けに勉強会を開くなど準備してきました。2年近くかかりましたが、1例目を実施できたことをとても嬉しく思います。麻酔科の先生や看護師、薬剤師、移植コーディネーター、管理栄養士など多職種の協力があって初めてできる医療ですので、皆さんに感謝しています」と西岡・特任病院長と林部長は口をそろえる。手術の1週間前からはシミュレーションを行って段取りを確認するなど、入念に準備してきたという。
移植医療をめぐってはドナー不足が大きな問題となっている。年間の腎移植数(生体腎+ 献腎)は17年に1742例。これに対して献腎移植希望登録数は同年末で1万2449人に上る。そのため臓器提供に対する理解を深める啓発活動にも積極的に取り組んでいく。生体腎移植に加え、今後は献腎移植も手がけられるよう、日本臓器移植ネットワークの献腎移植の施設認定を目指す考えだ。