マーケティング特集 新築移転計画の徳洲会グループ病院 さまざまなピーアール作戦展開
2020.3.24
マーケティング特集 新築移転計画の徳洲会グループ病院 さまざまなピーアール作戦展開
新築移転を計画している徳洲会グループ病院が、それぞれピーアール作戦を展開している。訪問活動エリアの拡大や、スマートフォンなどにダウンロードして使用する自院の公式アプリの開発、初の地域連携懇親会開催など、来るべく新病院オープンに向け、広報活動を展開、地域への周知に余念がない。今号は「マーケティング特集」として、徳洲会病院・施設の取り組みを全面にわたり紹介する。
訪問活動を遠近で充実――仙台病院
「新築移転に向け地域との関係をより強固に」と山内・課長補佐(右)、千葉職員
2021年秋に新築移転を予定している仙台徳洲会病院。同院は佐野憲院長が就任した17年以来、とくに訪問活動の充実を図っている。具体的に、医療講演の実施エリアを拡大。従来は院内講演をメインにしながら、仙台市を中心に病院から半径10㎞圏内程度だったが、半径40㎞圏内に広げた。担当している千葉英二・地域連携室職員は「佐野院長の指示により、車で片道約1時間までエリアを拡大しました。以前は開催していなかった仙台市外にも足を運び、医療講演を行うようになりました」と説明する。
「遠方でも治療してくれる医師がいれば行く」というニーズの掘り起こしを目的としていることから、もっぱら講演テーマは外科系。狙いは当たり、毎回20人以上が参加。その1割程度が患者さんとして受診しているという。
一方、地元では昨年から企業訪問に注力。「地域での当院のイメージは救急。ただ、企業は救急を利用する機会は少ないため、近隣であっても関係が希薄でした。現在、積極的に治療や健診などの案内を行っています」と、担当の山内美喜・総務課課長補佐。宮城徳友会(徳洲会病院・施設の協力企業で組織)の会員増など少しずつ成果が現れているという。
「患者さんの背景を知る意味でも地域に足を運ぶことは大事。新築移転の1年前となる今秋くらいまでには、もっと形にしたい」と余念がない。
『徳洲新聞』投函し周知――長崎北病院
新築移転に向け広報委員会で協議
「新病院では透析医療を開始します」と鬼塚院長(右)、宮崎係長
長崎北徳洲会病院の鬼塚正成院長は「新病院では透析医療を開始し、とくに入院を要する透析患者さんの受け入れに力を入れます。また回復期リハビリテーション病棟を現状の20床から30床に増床します」とアピール。同院は2021年3月竣工、5月診療開始を目指し、新病院を建設中だ。
移転先周辺は慢性期病院が中心で、救急・急性期医療に関して地域からの期待は大きい。医師の負担軽減など「働き方改革」も進めており、医師確保に努めていく意向だ。
新築移転に向け同院は昨年12月、広報委員会でピーアール戦略の検討を開始。「委員会での協議に基づき広報誌やホームページ、パンフレット、ポスターなどを通じ、工事の進捗(しんちょく)状況など移転情報を随時発信しています」(宮崎剛・総務課係長)。
また移転先近隣に案内文や、地鎮祭を詳報した『徳洲新聞』をポスティングなどし、周知に尽力している。
広報対象・ニーズを整理――札幌南病院
札幌南病院広報チーム。前列左から工藤昭子・看護部長、棟方千秋・看護師長、後列左から樋口奈津美・地域医療室兼移転準備室副主任、下澤・事務責任者、藤田利治システム管理室副主任
札幌南徳洲会病院は2021年7月の新築移転オープンを計画。新病院のコンセプトは① Hospitality(おもてなし)、②Hope(希望)、③ Healing(癒やし)の「3H」だ。緩和ケア病棟は現在の18床から40床に倍増する方針。2月、新築移転に向けた広報チームを立ち上げ、基本方針を「“ほっ”と“わくわく”」に定めた。Hot な情報で安心と期待を提供したいという思いを込めた。「広報の対象や対象ごとのニーズ、広報の目的を整理し、情報発信するのが効果的なマーケティングにつながると考えます」(下澤一元・事務責任者)。
現病院の周辺住民・患者さん、移転地周辺の住民・患者さん、札幌市全域・近隣市町村の住民や緩和ケア利用者さん、医療・福祉関係者、教育機関、職員に対象を整理。たとえば現病院の周辺住民・患者さんからの「移転後、新病院へのアクセスが不安」という声には、シャトルバス運行という施策を打ち出して広報し、不安や課題を解消する。
広報の手段は、広報誌『ふれあい』への掲載やミニ新聞の発行、ホームページやFacebook での発信、工事現場見学会、同院の軌跡をまとめたDVD作成など、多様な媒体・方法を考えている。
地域連携懇親会を初開催――鹿児島病院
初開催した地域連携懇親会で講演する皆川顧問
鹿児島徳洲会病院は2021年12月の新築移転オープンを目指し、3月8日に地鎮祭を挙行、新病院の基本方針は①離島・へき地医療の基幹病院、②救急・災害医療、③リハビリテーションの充実、④SIMPLE(動線に配慮)、⑤ FLEXIBILITY(将来を見据えて)―― の5つ。新築移転を前に、地域連携をより強固なものにするため、2月7日、地域連携懇親会を初開催した。冒頭、池田佳広院長は「新築移転先では、地域の救急ニーズにしっかりと応えることが求められます。さらに、ケアミックス病院として後方支援の役割も果たしていきます。地域の皆さんに信頼され、役に立てる病院を目指します」と決意表明。次に、皆川晃慶・徳洲会リハビリテーション部会顧問が特別講演を行った。
倉掛真理子・副院長兼看護部長は「すでに連携が取れている施設にご協力いただきながら、さらに連携の輪を広げていきたいと思います」と宣言。連携先の18施設の参加者が挨拶した後、中村彰副院長が「地域全体でワンチームになり、患者さんを診ていきましょう」と力強く誓い、閉会した。
昨年7月には自院のホームページに新築移転情報の特設ページをオープン、今後、新しい情報をタイムリーにアップしていく。また、年4回発行している広報誌や、医療講演「いきいき健康講座」でも新病院を紹介し、地域の方々への浸透を図っていく考えだ。
自院の公式アプリ開発――館山病院
「地元のワクワク感に応えていく」と田村次長
館山病院(千葉県)は2022年春の新築移転オープンに向け、5月に地鎮祭を行う計画だ。新病院のコンセプトは①「中規模」、「地域密着型」、「ケアミックス」病院として機動力を発揮できる病院、②リハビリテーションを核として「急性期・回復期・慢性期医療」の診療体制の整備、外科手術を強化し二次救急医療機関としての信頼性を構築、③災害時に対応できる病院、④病院と在宅医療・介護との関係強化を推進、⑤優秀な人材の採用と地域の人材育成に貢献できる病院――の5つ。南房総全域をカバーする地元日刊紙『房日新聞』に毎月4回、病院の案内を掲載、新年号には挨拶文とともに新築移転の情報も載せた。また、館山市が月1回発行する広報誌『だん暖たてやま』に、通常の病院案内広告を掲載している。
田村秀禎・事務次長は「当地域の方々はホームページよりも、地元の新聞や広報誌から情報を得ています。今では当院が新築移転することを多くの方々に知っていただいているので、今後はよりタイムリーに情報を提供し、ワクワク感に応えていきたいと考えます」と明かす。
さらに4月以降、情報発信をより強化するために、Facebook などSNSを活用すると同時に、「館山病院公式アプリ」をリリースし、多くの方々に活用を呼びかける予定。また、医療講座や病院広報誌、院内のポスター掲示などでも、つねに新しい情報を提供していく考えだ。
同時に進めているのがリクルーティング。なるべく安房地域の圏外から人を集めるために、JRバス関東館山駅の高速バスのチケット売り場や東京~館山間の高速バスの車内にチラシを置くなどして、広い範囲で同院の認知度拡大を目指す。