お知らせ

日本災害医学会 災害医療のあり方問う 徳洲会とTMATが8演題

2020.3.2

日本災害医学会 災害医療のあり方問う 徳洲会とTMATが8演題

第25回日本災害医学会総会・学術集会が2月20日から3日間、神戸市で開かれた。メインテーマは「これでいいのか、災害医療!」。徳洲会グループとNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)はポスター発表を含め計8演題を発表。口演(口頭発表)を中心に概要を紹介する。

避難者の環境と在宅

NPO法人TMAT
鈴木裕之
福岡徳洲会病院救急科医長

TMAT医師としてパネルディスカッション「これでいいのか、避難所!」のセッションで発表した。テーマは「TMAT活動からみる段ボールベッド導入の工夫~千曲川氾濫、西日本豪雨、熊本地震の経験から~」。

近年、段ボールベッドは床に直接寝るよりもDVT(下肢深部静脈血栓症)や感染症の予防が期待できる観点から、災害時の避難所生活で有用とされている。

鈴木医長はTMATのチームリーダーとして、台風19号(2019年)、西日本豪雨(18年)、熊本地震(16年)での医療支援活動を写真で示しながら、段ボールベッドをできるだけ速やかに導入する工夫を紹介。①避難者リストの作成、②避難所内のレイアウト作成、③段ボールベッドのメリットに対する避難者自身の理解――が前提条件として、個々の避難者の状態・状況を確認し、そのうえで家族構成や風通しなど環境に配慮しながら段ボールベッドの向き・配置を考える重要性を指摘した。

また、避難所の一角に実際に段ボールベッドを組み立てた“モデルルーム”を設けることで、段ボールベッドの良さが早く伝わったエピソードなども紹介。

鈴木医長は現状の課題として①車中泊など夜間の状況も確認したうえでの真のニーズ把握、②避難所で音頭を取るべき保健所関係者の早期負担軽減、③避難所の人口密度の高さ――を提示。より早期導入を図るための提言として「大きな避難所には同じチームを常駐させる」、「公的チームの発災3日以内の介入」、「避難所の人口密度の調整」を示し、「すべては被災者のため、避難者の生活改善のために」と結んだ。

また、福岡病院救急科医長として一般演題で「在宅部門の災害医療――総合病院の災害訓練から見えた課題――」 と題し発表。院内の在宅部門で災害訓練を行った結果、多職種がかかわるため指揮命令系統が確立しにくいことや、発災時の職員の安否確認、訪問時の安全確保、終末期医療と災害医療の兼ね合いなど特有の課題があることを示唆。「在宅医療の防災は“日本の将来を左右する命題”」とし、地域ごとに“在宅医療指揮所”を設ける必要性を指摘した。

医療過疎地での対応

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)
堀田和子
脳神経外科医長

一般演題で「過疎地域での多数傷病者事例」と題し、山北徳洲会病院(新潟県)での経験を報告した。同院が位置する地域は医療過疎地。堀田医長は、病院近くで発生した乗用車の正面衝突事故や昨年6月の山形県沖地震で、同院の医師や救急隊、ドクターヘリの救急医らと連携し複数の患者さんの受け入れ・搬送を円滑に行ったエピソードを紹介。

医療過疎地での基幹病院の役割の大きさを強調するとともに、「医療過疎地域での多数傷病者は大規模災害対応と似ている」との指摘があることを示し、今後はあらゆる事故・災害などに対する院内のマニュアル整備、夜間の搬送手段やヘリ不使用時のシミュレーションの必要性を示唆した。

継続支援できるチーム

NPO法人TMAT
浦部優子
湘南藤沢徳洲会病院
(神奈川県)
非常勤医師

「令和元年の台風」のセッションで「2019年台風19号被害支援 宮城県丸森町での活動報告」と題し発表した。浦部医師はTMATとして10月15日から9日間、仙南保健所本部の指揮下で同町内学校体育館避難所を支援。TMATメンバー、国際ボランティア団体、自衛隊救護班、災害支援ナース、多様な地域の保健師らとともに清掃やゾーニング、段ボールベッドの導入、公衆衛生活動、災害時診療・処方、靴箱や子どもの遊び場づくりなどを行った。

一連の活動を通じ、避難所には多岐にわたる問題があるため医療・保健・福祉・運営まで“継続的に支援するチーム”の必要性を最も強調した。

ポスター発表は4演題。▽村山弘之・成田富里徳洲会病院(千葉県)副院長は「令和元年台風15号(Faxai)による千葉県の被災地域における当院の役割」と題し発表。停電を免れたことから一時、地域の“最後の砦(とりで)”となり、TMATの協力を得ながら救急搬送や近隣被災病院からの患者さん受け入れに対応。その後の台風19号の対策にも役立てたことを報告した。▽TMATの鵜澤佑・業務調整員(湘南藤沢病院救急救命士)は「令和元年台風第19号被害―長野県千曲川決壊被害におけるTMAT先遣隊の活動報告―」がテーマ。昨年10月13~18日に行った長野市内の避難所支援を紹介し、「保健師以外に災害支援の実績が豊富な非政府組織などの介入で、より効果的な避難所支援が可能になる」とした。▽岸和田徳洲会病院(大阪府)の西本幸司・資材・施設係職員は「エレベーター使用不能時における患者搬送器具の比較」をテーマに発表。患者さんを6階から1階に階段で運ぶ場面を想定し、7種類の搬送器具を検討。担架タイプでシート状の器具が最も有用だったことを明かし、各病棟に配置したことを説明した。▽庄内余目病院(山形県)の渡會輝美看護師は「初めて実働訓練を実施しての振り返り」と題し、自院初の災害訓練について報告。表計算ソフトを活用して情報収集や方針決定などを行ったことを説明し、「有事に備え、今後も継続していきたい」と結んだ。

ページの先頭へ