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いち早く救急現場に駆け付け救命 岸和田病院がラピッドカー導入 徳洲会初 スポーツ用多目的車

2020.3.2

いち早く救急現場に駆け付け救命 岸和田病院がラピッドカー導入 徳洲会初 スポーツ用多目的車

岸和田徳洲会病院(大阪府)はラピッドレスポンスカー(ラピッドカー)を導入した。これは乗用車タイプのドクターカーで、医師など医療スタッフがいち早く救急現場に駆け付け、医療機関搬送前に医療的処置を行い患者さんの命を救うのが狙い。2月17日には病院敷地内で式典を開き、列席した岸和田市長や岸和田市消防長から期待する声が上がっていた。今後、院内の体制づくりやトレーニングを行い、4月1日の稼働を目指す。

4月1日の稼働を目指す

ドクターカーは医師など医療スタッフや医療機器を救急現場に運ぶための緊急車両。救急車で医療機関に運ばれてから医療を提供するのではなく、医師らが現場に赴き、その場で傷病者に医療的処置を行うことで、“救える命を救う”ことが期待されている。

ドクターカーは大きく救急車タイプと乗用車タイプに分かれ、一般的に救急車タイプは傷病者を車内に収容でき、乗用車タイプは傷病者を乗せるスペースはないものの、小型であるぶん、機動性に富んでいるのが特徴だ。今回、岸和田病院は現場に到着するスピードを重視し、乗用車タイプを導入。ベースの車種がオフロードにも強いSUV(スポーツ用多目的車)は徳洲会初。
「医療行為が加わることで救命率の向上や予後の改善が期待できるケースがあります。とにかく救急車が来るまで1秒でも早く処置できる体制づくりを意識しました」と鍜冶有登・救命救急センター長は説明する。


尾野院長は「一層の努力」を約束尾野院長は「一層の努力」を約束

「救命では本来、出ていくことが大事」と鍜冶センター長「救命では本来、出ていくことが大事」と鍜冶センター長

地元の消防関係者の期待も高い。岸和田市消防本部の岬大嗣・警備課救急係長は「救急車では入れないような狭い場所などで、より現場に近づけることや、車が小さくなることで運転しやすく事故などのリスクが軽減することも想定されます」。

現在、同院は院内の体制づくりやトレーニングを行っており、4月1日に運用を開始する予定。当面は「岸和田市内」の「CPA(心肺停止)を含む重度の意識障害」を対象とし、「平日午前9時~午後5時まで」の稼働、車両に搭乗するのは「医師と救急救命士」を想定している。
「当地域はJCS - 300(意識障害のレベル。CPAも含む)で救急出動する件数が年間約400件(図)。平均で1日1件超と多いのが現状です。対象エリアを含め、まずは身近なところから始め、状況に応じて運用の中身を見直していきます。いずれは看護師の同乗や、対象地域も岸和田市だけでなく泉州医療圏にまで広げていきたい」(鍜冶センター長)。


尾野亘院長は導入したラピッドカーを「地域のもの」と強調。「当院は救命救急センターに指定されるなど、今や公的な役割も求められている病院だと思っています。地域で困っていることがあれば、たとえ他院が行っていないことでも、解決に向け動かなくてはならないと自負しています」。

市長や消防長も式典に

導入したラピッドカーのベース車種はSUV導入したラピッドカーのベース車種はSUV

ラピッドカーの導入にともない、同院は2月17日に敷地の一角で式典を開催。病院三役をはじめスタッフら約20人が列席した。

はじめに尾野院長が挨拶。救命救急センターの指定や屋上ヘリポートの設置など、自院の救急医療にかかわる歴史を振り返りつつ、新たにラピッドカーを運用することに喜びを示した。最後に「これからも地域の救急に貢献できるように一層努力します」と誓った。

来賓の挨拶では永野耕平・岸和田市長がラピッドカーの導入について「一市民として喜ばしい限り」と述べ、同院のさらなる医療の質向上に期待をかけた。

続いて、岸和田市消防本部の眞和弘消防長が登壇。日本の救急搬送件数が増加の一途をたどるなか、岸和田市も昨年1万3230件で過去最高だったことを紹介。しかし、その90%が市内で完結できていることに「各医療機関のおかげです」とし、さらにその半数に対応している岸和田病院に、あらためて謝意を示した。

その後、「我々の救急業務の究極の目的は、患者さんの容態を悪化させることなく迅速に医師の下に引き継ぐこと」と語り、ラピッドカーの運用に「心強いアイテムをひとつ手に入れたと確信しています」と語気を強めた。「先の見えない救急医療ですが、今後も各医療機関との関係をさらに強固にし、市民の期待に応えていきたい」と決意を表明し、同院にさらなる協力を求めた。

テープカットに臨む(左から)篠﨑正博・岸和田病院顧問、眞消防長、永野市長、尾野院長、鍜冶センター長、深野明美・看護部長

最後に、鍜冶センター長が挨拶。ふだん救命救急センターのスタッフに「(センターの入口から)運ばれてくる方の命をひとつも落としてはならない。そういう覚悟で臨むように」と声をかけていることを明かしつつ、「ただ本来、命を救うためには医療者が出ていくことが大事。ラピッドカーを運用できることに喜びを感じています」と笑みをこぼした。「まだまだ足りないところがあると思いますが、運用しながら良い形にしていきたい」と締めくくると、列席者から大きな拍手が湧いた。関係者によるテープカットを行い閉会した。

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