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肺移植 世界初の術式駆使 大藤・岡山大学病院教授

2020.2.13

肺移植 世界初の術式駆使 大藤・岡山大学病院教授

1月度徳洲会グループ医療経営戦略セミナーが2月1日から2日間、千葉県で行われ、初日に岡山大学病院臓器移植医療センターの大藤剛宏教授が「肺移植の革新」をテーマに講演した。大藤教授はドナー(臓器提供者)による臓器提供の少ない日本で、新しい術式を駆使して救命にあたっており、その術式や肺移植を行ううえで大切にしている思いなど紹介した。


「創意工夫をして患者さんの命を救いたい」と大藤教授

大藤教授はまず、他院から患者さんの紹介を受けて自院で肺移植を行う場合、往診を大切にしていると強調。病状の把握、移送手段の確保に加え、移植後のフォロー体制を確立するために、紹介元のスタッフと顔の見える関係を築いていると明かした。

肺移植をめぐる日本の現状として、諸外国に比べ実施件数が少ないことを指摘。その要因として、脳死ドナーによる臓器提供が足りないことを挙げた。待機期間は2~5年だが、とくに間質性肺炎など拘束性疾患(肺の容積減少にともない肺活量が減少)では、待機中に死亡するリスクが高い。

さらに、肺は傷みやすい臓器のため、提供されたすべての臓器が使われるわけではなく、一部は捨てられている現状を吐露。55歳以下、非喫煙者、胸部外傷がないことなど項目を満たす理想的な脳死ドナーが少ないことも示した。

捨てられる肺も“宝”

こうした現状に対し大藤教授は、さまざまな術式に挑戦して肺移植に奏功しており、その一部を紹介した。

両側上葉による左肺形成術は世界初の試み。これは、挫傷などにより両側下葉にダメージを受け、両側上葉しか機能しなくなったドナーの肺を組み合わせ、レシピエント(臓器受給者)の左肺を形成するという術式だ。

また、ハイブリッド肺移植は、1人のレシピエントに対し2人のドナーから肺を移植する術式で、生体ドナーの右肺下葉と脳死ドナーの左肺を使って移植した症例をもとに解説した。

大藤教授は岡山大学病院の肺移植成績を紹介したうえで、「臓器提供の少ない国だからこそ、無駄になる臓器があってはなりません。肺移植を待ち続ける患者さんにとって、捨てられる肺もまさに〝宝の肺〟なのです」と訴えた。

さらに、肺移植はチーム医療であると強調。中国やスリランカ、ベトナムに赴いて肺移植を実施した際に、移植外科医やドナー摘出医、麻酔・集中治療医といった医師に加え、理学療法士、臨床工学技士、看護師など多職種の協力があったことを披露した。

最後に大藤教授は、子どもの肺移植にも力を入れていることを明かし、「日本で活動しているからこそ、日本初、世界初の術式を行う機会が増えています。これらを駆使しながら患者さんの命を救っていきたいと思います」と結んだ。

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