離島応援――田原・出雲病院院長の提言① 「複数主治医制」を導入 応援医師負担軽減に腐心
2019.11.20
離島応援――田原・出雲病院院長の提言① 「複数主治医制」を導入 応援医師負担軽減に腐心
「地方の小さな地域病院だからできることも」と田原院長
島根県にある出雲徳洲会病院(183床)は、今年2月から病院を挙げて離島応援を開始した。同院は開院して14年目を迎えたが、これまで手術に限った応援や月1回の当直などスポット的な応援は行っていた。それが2〜6月は常勤医師14人中8人が、1週間ごとに、ほぼ切れ目なく鹿児島県の奄美群島にある与論徳洲会病院へ応援に出向くことができた。さらに、その間、同群島にある沖永良部徳洲会病院と徳之島徳洲会病院にも数日間の短期応援を実現した。
7〜12月は与論病院への応援希望者を募るため、医局に「離島応援カレンダー」を貼り出して、応援に行きたい週を医師自ら書き込んでもらっている。来年1〜4月は再度、1週間ごとに切れ目なく応援できる体制を組む方針だ。常勤医14人中8人ほぼ切切れ目なく応援できる体制を組む方針だ。
常勤医14人中8人 ほぼ切れ目なく離島へ
医局に貼り出してある「離島応援カレンダー」
なぜ、14人中8人もの医師が応援に行けるのか――。田原英樹院長は「理由のひとつは、地方の小さな地域病院だからです。当院の医師は皆、自分の専門以外の患者さんも診ていますので、離島に行ってもあまり困らないのではないかと思います」と明かす。これが大病院であれば、自分の専門以外の患者さんを診ることはほとんどない。実際、田原院長が大学病院に在籍していた時は、自らの専門である外科の患者さんしか診ていなかった。「自分の専門領域以外の患者さんを診ることへの躊躇(ちゅうちょ)もあるでしょうし、大病院は目の前の患者さんがあまりにも多く、離島に行く余力もあまりないのでしょう」と自らの経験をふまえ説明する。
田原院長は離島応援の重要性について常々、医局会で唱えている。「どれだけ離島病院の先生方と島民の方々が大変な環境に身を置いているか。また徳洲会グループは離島応援があるからこそ存続しているということを説明しています。『たくさんの応援はできませんが、少しでも力になっていきましょう』と話しています」。
離島応援の問題点も議論している。そのなかで、ある医師から「離島応援に行くのはいいが、帰ってきた時に業務が山のように溜まっているのがきつい」という不満の声が上がった。
これを解決するため「複数主治医制」を導入した。具体的には医師を外科系、内科系に大きく分け、離島応援中の診断書の作成や入院中の患者さんへの病状説明などは副主治医が対応。また、外来に関してもやめず、他の医師に診てもらうようにした。なかには3週間、応援に出向く医師もいるが、その場合は完全に主治医を交代することにしている。
なぜ、このような体制を比較的スムーズに敷くことができたのだろうか。