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肺がん研究会・症例検討会 病理の視点を交える 徳洲会呼吸器部会が開催

2019.11.20

肺がん研究会・症例検討会 病理の視点を交える 徳洲会呼吸器部会が開催

徳洲会呼吸器部会は10月19日、都内で第12回肺がん研究会・第10回症例検討会を開いた。徳洲会オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環で、肺がんなど呼吸器疾患の診療能力の向上が狙い。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師ら約70人が参加し、多様な症例の共有とともに、活発に意見を交わした。初の試みとして一部の症例では病理解説を行うなど、プログラムの創意工夫も見られた。


「野口分類」の野口TEP センター長がポイント解説

「今回も有意義な会にしましょう」と瓜生部会長 「今回も有意義な会にしましょう」と瓜生部会長

会は部会長の瓜生恭章・八尾徳洲会総合病院(大阪府)内科部長の挨拶でスタート。

瓜生部会長は、今回「病理コンサルト」として初めて病理の観点から、疾患について解説してもらうセッションを設けたことを明かし、「どのような展開になるか予想がつきませんが、私自身とても楽しみです。今回も有意義な会にしましょう」と呼びかけた。

徳洲会オンコロジープロジェクトの新津洋司郎顧問(札幌医科大学名誉教授)は呼吸器部会を「新しいことにチャレンジしている部会」と評するとともに、グループ内にとどまらず、さまざまな形で社会に認知されていくことを望んだ。

目玉企画のひとつである病理コンサルトのセッションは会後半で実施。

千葉西総合病院の岩瀬彰彦・呼吸器内科部長、宇治徳洲会病院(京都府)の伊東真哉・呼吸器外科部長、武蔵野徳洲会病院(東京都)の佐藤悦子・腫瘍内科医師、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の杉本栄康・呼吸器内科部長が、それぞれ症例を発表し、徳洲会グループ東日本病理診断研究センター(TEP)の野口雅之センター長(筑波大学医学医療系診断病理学研究室教授)が病理医の立場からアドバイスした。


野口センター長は「野口分類」という小さな肺腺がんの病理分類で世界的に著名な医師・研究者。

症例に病理解説を加える野口センター長(左) 症例に病理解説を加える野口センター長(左)

発表された症例は、がんを疑い診断治療を兼ねた手術を行ったところ、術前画像や術中所見からは予想しない病理結果が得られたケースや、骨肉腫に分化した肺動脈原発の血管内膜肉腫、EGFR(がん細胞が増殖するスイッチのような役割を果たしているタンパク質)で構成する遺伝子の複数に変異が認められた肺腺がんなど、いずれも稀有な例。

各演者が診断・治療に難渋した様子を説明したり、解決すべき課題を含んでいる点を指摘したりした後、野口センター長は各演者のスライドや自ら持ち込んだ検査画像の資料をもとに、鑑別のポイントなどを解説した。

また、会の前半では従来の症例報告を行い、免疫チェックポイント阻害薬が奏効した末期腎不全の肺腺がん、粟粒(ぞくりゅう)結核(結核菌が血流によって全身に広がり発症するタイプの結核)、両肺に多発した悪性リンパ腫に対する外科切除をテーマに、それぞれ発表した。演者は名古屋徳洲会総合病院の可児久典・副院長兼呼吸器外科部長、宇治病院の千原佑介・呼吸器内科医長、千葉西病院の菅沢真・初期研修医。

最後に、湘南鎌倉病院の築山俊毅IVRセンター長兼放射線診断科部長が「肺動静脈奇形( 瘻(ろう))に対するコイル塞栓術再考」と題するミニレクチャーを行った。肺動静脈奇形は、正常な肺毛細血管を介さずに肺動脈と肺静脈が連結している血管の病気のひとつで、無症状の場合もあるが、脳梗塞や脳膿瘍、呼吸器症状などを引き起こすケースも散見される。血管内治療のコイル塞栓術が用いることが多い。

築山センター長は、あらためて肺動静脈奇形について説明。単純型と複雑型に分類され、治療難易度が大きく異なる点や、治療後の再発のメカニズムも多様なパターンが見られる点などを指摘し、長期的に治療効果を担保するには、初回治療時から再発パターンまで考慮して対応する必要を説いていた。

そのうえで、実症例を画像で示しつつ、①単純型に見えても複雑型の可能性、②術前のCT(コンピュータ断層撮影装置)検査で明らかに複雑型であれば治療に難渋する可能性、③単純型であっても、可能であれば供血血管(肺動脈側)のみの塞栓ではなく、嚢状拡張部(Sac)を含めた塞栓のほうが、高い治療効果を期待できる可能性――などを示唆し、締めくくった。

病理医と臨床医の連携が必要不可欠

その後、参加者は他団体主催の肺がんをテーマとした講演会に参加。大阪国際がんセンターの井上貴子・呼吸器内科医長が「免疫チェックポイント阻害薬実践マネジメント」と題する基調講演。特別講演では、がん研有明病院の西尾誠人・呼吸器センター長兼呼吸器内科部長が「非小細胞肺がんに対する新たな治療戦略」をテーマに、自院の診療体制や免疫チェックポイント阻害薬をはじめ、今後のがん治療の展望を示した。

終了後、瓜生部会長は「今後の診療をより良いものにするには、病理医と臨床医の連携が不可欠。病理のスペシャリストである野口センター長に“かけ橋”になってもらいたいと考え、協力を仰ぎました」と説明。「部会の新たな一歩につながりました」と笑顔で振り返った。

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