お知らせ

湘南鎌倉病院 腎移植100例達成記念会 「より多くの患者さんを救う」

2019.11.06

湘南鎌倉病院 腎移植100例達成記念会 「より多くの患者さんを救う」

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は院内講堂で腎移植100例達成記念会を開催した。同院は2012年12月に生体腎移植(健常な生体からの提供)、18年春に献腎移植(死後、善意による提供)の1例目をそれぞれ実施、今年8月に100例を達成。同院で実施した腎移植のドナー(臓器提供者)やレシピエント(臓器受給者)、その家族からなる腎移植家族会(湘南鎌倉KT会)も結成している。記念会には同院職員や地域の医療従事者、湘南鎌倉KT会の方々が参加した。


「一つひとつの命をつないでいく」と小林・院長代行 「一つひとつの命をつないでいく」と小林・院長代行

冒頭、篠崎伸明院長が「日頃からの皆さんのご協力のおかげで、100例を達することができました」と謝辞を述べ、「〝生命だけは平等だ〟の理念の下、これからもより多くの患者さんを救っていきたいと思います」と決意を新たにした。

一般講演では守矢英和・腎臓病総合医療センター部長兼医局長が座長を務め、まず湘南鎌倉KT会の水野正興会長が講演。自身が腎不全になり、移植を決意するまでの経緯や思いを伝え「病院の設備からスタッフの対応まで、安心して手術を受けることができました。移植後、それまでの重い気分から一転、幸せを感じました。この幸せをひとりでも多くの方に伝えていくため、私の経験が少しでも役に立てたら良いと思います」とアピール。

次に吉岡睦美・看護部副主任がレシピエント移植コーディネーターの立場から講演した。同職は、臓器移植の全過程で移植チーム内外を円滑に調整し、医療チームと患者さん・家族の間に立って、両者の支援を行う役割と説明。「移植は腎不全医療のひとつと考え、患者さんの腎不全ライフに合わせ一緒に療法選択を考えていきます。患者さんにより近い視点で情報提供していきたいです」とメッセージを送った。

「今後は臓器提供病院になることも目標」と日髙部長 「今後は臓器提供病院になることも目標」と日髙部長

日髙寿美・腎移植内科部長は内科の立場から講演した。17年4月に院内に腎臓病総合医療センターが発足し、腎移植件数が増えていった経緯を説明。腎移植は多職種がかかわり、病院全体で実施している医療と強調した。

腎移植の原疾患の割合、レシピエントの性別や年齢など報告した後、腎移植内科のモットーとして「腎代替療法を自由に選択できる施設であり、今後も多職種で包括的に介入していきます。また、レシピエントのみならず、ドナーのフォローを確実に行い、両者の腎機能維持を図ります」と語気を強め、「今後は臓器提供病院になることを目指します」と展望を明かした。

三宅克典・腎移植外科部長は外科の立場から講演。腎移植を安全に行うために、安全・確実な手術が不可欠であり、とくにドナーに関しては、より慎重・低侵襲が重要とのモットーを強調した。

「ドナーの安全が移植医療の推進に不可欠」と三宅部長 「ドナーの安全が移植医療の推進に不可欠」と三宅部長

同院では完全後腹膜腔鏡視下(こうふくまくくうきょうしか)ドナー腎採取術を実施。これは腹腔(ふくくう)内臓器の損傷がない、採取できる腎静脈が長い、腹腔内癒着がないため腸閉塞になりにくいなど利点がある一方、視野が狭く技術的にやや難しいという難点もある。同採取術を可能にしているのは三宅部長の技術と丁寧な手技による。「ドナーの安全が移植医療の推進に不可欠だと考えます」と三宅部長は力を込めた。

小林修三・院長代行は「腎臓病診療と海外支援」をテーマに講演。タンザニアでの現地医療スタッフによる腎移植支援プロジェクトの実現は〝3つの決断〟が必要だったと述懐した。ひとつ目は16年8月に現地のベンジャミン・ムカパ病院を訪問して状況を知った時、2つ目は18年1月に実行の最終判断をした時、さらに3つ目は手術日に先行して現地を訪れた湘南鎌倉病院スタッフからの報告を受けた時だ。

さまざまな困難を乗り越え、18年3月22日に1例目の腎移植を実施。その後も同年8月に3例、19年3月に3例を実施し、計7例の腎移植を完遂したことを報告した。

「日本人患者さんに適したエビデンスを」と奥見准教授 「日本人患者さんに適したエビデンスを」と奥見准教授

続いて特別講演として、東京女子医科大学病院の奥見雅由・泌尿器科准教授が「わが国の腎移植と最近の話題」をテーマに講演。1954年に米国で行われた世界最初の腎移植や、国内の透析・腎移植患者数の推移など説明。近年の腎移植レシピエントの特徴として高齢化や、糖尿病を原疾患とする腎不全患者さんの増加、長期透析患者さんの増加を挙げ、適切な術前評価・治療、術後管理が必要であると強調した。

移植腎を長持ちさせるには、腎移植術前から術後にわたる継続管理が重要であり、とくに術後は免疫抑制療法と保存期CKD(慢性腎臓病)管理を両立していく必要があると解説。「日本人腎移植患者さんの疫学・予後を正確に評価し、日本人腎移植患者さんに適したエビデンス(科学的根拠)を構築していく必要があります」とまとめた。

最後に、小林・院長代行が「私たちは診療科、職種の枠を越えて、一人ひとりの患者さんをみています。これからもレベルを上げ、全スタッフが団結して200例、300例へと向かい、一つひとつの命をつないでいきたいと思います」と決意を新たにしていた。

ページの先頭へ