ダヴィンチ稼働スタート 福岡病院 徳洲会で17施設目
2019.09.24
ダヴィンチ稼働スタート 福岡病院 徳洲会で17施設目
福岡徳洲会病院は内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入、泌尿器科を中心に消化器外科でも稼働を開始した。泌尿器科では4月26日に1例目を実施、9月11日に10例に達し、順調に症例数を伸ばしている。同機は徳洲会グループ全体で17施設に計18台を導入。昨年から今年初めにかけて、導入していた7病院で最新機種にアップデート、4病院で新規導入。徳洲会はスケールメリットを生かし、合同勉強会「ロボット支援手術懇話会」を開催、同手術の研鑽(けんさん)に努めている。
安全で患者さんの負担も軽減
「前立腺のように狭い空間の手術で威力を発揮」と鍋島部長
ダヴィンチは内視鏡カメラや鉗子(かんし)、電気メスなどが装着可能な4本のアームをもつロボット部分と、それを操作するコンソール(操作台)からなる。術者はコンソールに座って内視鏡カメラが写し出した3D映像を見ながら、アームを遠隔操作して手術する。2012年に前立腺がん、16年に腎臓がんで保険適用。18年には縦隔がん、肺がん、食道がん、胃がん、直腸がん、膀胱(ぼうこう)がん、子宮体がんで保険適用となった。福岡病院では泌尿器科分野に加え、外科、婦人科などへの適用拡大を受け、ダヴィンチを今年1月に導入。鍋島義之・泌尿器科部長は「近年は泌尿器科分野、とくに前立腺がんの治療ではダヴィンチを使用した手術が主流になっています。患者さんの負担軽減のためにも導入が必要だと考えました」と明かす。
前立腺がんを手術で治療するメリットとして、①単独で完治が得られる可能性が高い、②組織を取り出し検査することで、より正確ながんの広がりが把握できる、③術前の画像診断などで判別できなかったリンパ節転移を含めて治療し得る――などが挙げられる。
手術単独での完治を期待できるのは全体の7~8割程度。悪性度の高いがんの場合、術後に再発することがあるが、放射線治療やホルモン療法を追加して完治を目指すことができる。同院ですべての治療に対応可能だ。
ダヴィンチをコンソールで操作する鍋島部長
ダヴィンチ導入前、同院では前立腺がんに対し、腹腔鏡(ふくくうきょう)下小切開手術を実施していた。これは4~6㎝程度の小さな切開だけで行う手術で、安全で体への負担が少ないのが特徴。ただし、手術操作を行う空間が狭いなどデメリットもあった。一方、ダヴィンチによる手術では視野が3D映像で確保され、手術器具の操作性も向上。鍋島部長は「体の中で鉗子などを細かく動かせるため、前立腺のように狭い空間の手術ではダヴィンチが威力を発揮します」と強調する。通常の手術より、出血量が少なく、これまで同院で経験した手術で輸血に至った症例はない。術後の入院日数も短縮した。術後に生じる尿失禁や性機能不全など合併症についても、鍋島部長は「ダヴィンチ導入前よりも、尿失禁は早い段階で回復しているように感じます。ダヴィンチの内視鏡画像では、機能温存のために必要な解剖が、より明確に視認できるため、正確に手術ができるからだと思います」と分析。
ただし、「完治したかどうかは数年かけて追わないとわらないので、今後も丁寧に診察していきたいです」と展望する。
同院が立地する春日市は福岡市に隣接しており、福岡市にはダヴィンチを擁する病院が5施設ある。この激戦区で症例を確保するために、福岡病院では平日は毎日手術に対応できる体制を取り、手術待機時間を短縮するよう工夫している。すでに近隣の泌尿器科を開設している施設に挨拶を行い、福岡病院のホームページでも広報を展開。今後、積極的に学会発表を行い、ダヴィンチ稼働施設としての認知度アップを図っていく。
自院の検診も強化し治療につなげる。人間ドック(PET-CTがんドック)などで実施するPSA検査(前立腺がんの診断、治療経過観察中の再発を見つけるための検査)で異常があった患者さんに、精密検査を推奨するなど院内連携を推進し、早期発見に努める。
前立腺がんで経験を積んだ後はダヴィンチを用いた腎臓がんの手術も視野に入れている。鍋島部長は「手術に参加する他の医師や看護師、臨床工学技士は、だいぶ慣れてきて頼もしい限りです。短期間で多くの症例を重ね、より安全に短時間で手術を実施できるように研鑽を積んでいきます」と意気込みを見せている。