学術集会 日本経カテーテル心臓弁治療学会 日本初のTAVIライブ 湘南鎌倉病院 齋藤総長・野口部長が会長
2019.08.27
学術集会 日本経カテーテル心臓弁治療学会 日本初のTAVIライブ 湘南鎌倉病院 齋藤総長・野口部長が会長
第10回日本経カテーテル心臓弁治療学会(JTVT)学術集会が7月14日から2日間、神奈川県内で開催された。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の齋藤滋・総長兼循環器科主任部長と野口権一郎・心臓血管外科部長のふたりが、内科系と外科系のそれぞれの会長を務め、全国から500人以上の心臓弁治療に携わる医師らが集まり、研鑽(けんさん)を積んだ。徳洲会からはビデオライブやパネルディスカッション、シンポジウム、一般演題、ランチョンセミナーで計15演題の発表があった。
徳洲会から15演題発表
開会挨拶する齋藤総長(右)、野口部長
カテーテルによる低侵襲な心臓弁治療法は2013年に大動脈弁狭窄(きょうさく)症に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)、18年には僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復システム)が保険適用となった。いずれの疾患も従来、根治治療は外科手術に限られていたが、高齢や併存疾患が原因で手術を受けられないケースがあった。一方、TAVIやMitraClipは身体への負担が小さいため、外科手術が難しい患者さんも受けることができる。こうしたなか、循環器内科医や心臓血管外科医などからなるハートチームが一丸となって治療に取り組む重要性が以前にも増して高まっていることから、JTVTはこれら治療法の進歩や普及を目指して学術集会を開催。
冒頭の開会挨拶で齋藤総長と野口部長が登壇し「今回は国内で初めてとなる国内から国内へのTAVIのライブデモンストレーションの中継を行います。活発なご討議を期待しています」と呼びかけた。
ライブデモは、宮城県にある仙台厚生病院のハイブリッド手術室で実施するTAVIの模様をリアルタイムに中継し、学術集会の会場に設けた大型スクリーンで上映。教育的な意義のある症例を選別し、安全性を重視して取り組んだ。
症例は重度の大動脈弁狭窄症がある80代の女性患者さんで、術者は仙台厚生病院の多田憲生・循環器内科主任部長。齋藤総長と、大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学の澤芳樹教授が座長を、野口部長らがコメンテーターを務めた。
TAVIに用いる人工弁の選択理由や手技のポイントなどについて質疑応答をはさみながら、安全に治療を完遂。参加者はスクリーンに映し出された透視画像や経食道心エコーの画像を熱心に見つめていた。
日本初のTAVIのライブデモに参加者一同が注目
MitraClipのビデオライブでは、湘南鎌倉病院の水野真吾・循環器科部長が経食道心エコーなど術中動画を供覧しながら手技のポイントを解説。症例は重度の僧帽弁閉鎖不全症がある60代女性患者さんで、ガイドラインに沿った薬物療法を2カ月間実施したものの、血液の逆流が改善しなかったことからMitraClipを施行した。今回、「JTVT-TVT Collaboration Session」という特別セッションも行った。著名な循環器内科医である米国コロンビア大学メディカルセンターのマーティン・レオン医師が座長として参加。TVTは米国を中心とした国際的な経カテーテル心臓弁学会を指す。
このセッションで齋藤総長は19年6月に米国シカゴで開催されたTVT学術集会のプログラムから、自身も参加したJTVTとTVTの合同セッションの概要を報告。日米のPCI(経皮的冠動脈形成術)のレジストリ(疾患登録)データや、米国のTAVIの治療成績などを紹介し、今後、日米で共通した基準のレジストリデータを整備していく方針であることを説明。
齋藤総長は「今回、TVTとのコラボレーション、そしてライブデモンストレーションを実現できたことは大きな収穫です。TVTと連携することで相互にレベルアップを図ることが期待できます。またライブデモでは見事な手技を披露いただきました。教育的な効果は大きいと考えています」と手応えを示している。
同学術集会では徳洲会グループから湘南鎌倉病院の山中太・循環器科部長、岸和田徳洲会病院(大阪府)の東森亮博・循環器内科部長がシンポジウムで、湘南鎌倉病院の水野部長、野口部長、宍戸晃基・循環器科医長、札幌東徳洲会病院の山﨑和正・循環器内科医長、上田高士・心臓血管外科部長がパネルディスカッションで、湘南鎌倉病院の落合智紀・循環器科医師、森山典晃・同科医師(ヘルシンキ大学に留学中)がアフタヌーンセミナーで発表。一般演題やランチョンセミナーでも複数の演題発表があった。