「スパイグラスDS」導入 東京西病院 胆道疾患への対応力強化
2019.08.27
「スパイグラスDS」導入東京西病院 胆道疾患への対応力強化
東京西徳洲会病院は胆管・膵(すい)管鏡システム「スパイグラスDS」を導入した。胆管などに挿入できる新型の胆道鏡で、これにより従来は難しかった管の中を診ることや、結石の破砕など治療が可能になる。操作性や画質も向上し、同システムを駆使することで、これまで同院にとって困難だった症例に対応できる。すでに例に用い、いずれも診断や治療などの面で狙いどおりに活用できているという。
徳洲会グループで3施設目
スパイグラスDSは経口型の新たな胆道鏡。口から通常の内視鏡を挿入し、鉗子(かんし)口(内視鏡の先端にある穴)からカメラなどを装着したさらに細い管(スパイスコープDS)を胆管などに挿入することで、胆管の中を診ることができる。先端には鉗子口が設けられ、鉗子を装着して病変部の組織を採取することが可能だ。送水・吸引が可能な内腔(ないくう)もあり、電気水圧衝撃波結石破砕術(EHL)を行うこともできる。(図)
同システムは操作性に優れ、専用のコントローラでスパイスコープのアングルを上下左右に変えられるほか、半固定することも可能。また、送水・吸引ができる内腔の操作は独立しているため、鉗子などを使用している時でも送水・吸引が可能だ。カメラにはオートフォーカス機能や被写体の色味を自動で調整する機能を搭載。プラグを差すだけで、すぐに使用でき、微調整する手間はいらない。
デジタル化による画質の向上も同システムの特徴のひとつ。高機能のイメージセンサーと複数の高輝度LEDライトにより、明るくて見やすい解像度の画像が入手できる。カメラの視野角も120度と広い。
従来、胆管や膵管の疾患では、内視鏡を用いて胆管・膵管の出口に当たる十二指腸乳頭から造影剤を注入しX線撮影することで、管の中の状態(がんや結石など)を検査するERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)が一般的だった。しかし、ERCPでは管の内部を画像でしか評価できないため、なかには診断が難しいケースなどもあった。
内視鏡センターのスタッフ(後列右が山本部長)
東京西病院の山本龍一・肝胆膵内科部長兼内視鏡センター長兼消化器病センター長も「結石だと思っていたのが腫瘍、あるいは腫瘍だと思っていたのが結石だったなど、想定と異なるケースがありました」と述懐。胆管結石はサイズが大きい場合、治療に難渋する。近年、体外から衝撃波を当て結石を破砕するESWLという治療法も行われている。
地域に高齢者が多く、治療が困難な総胆管結石のケースも少なくないことから、今回、同院はスパイグラスDSの導入に踏みきったという。山本部長は「結石ができて詰まったりすると、胆管炎を起こしたり黄疸ができたりして、重篤化すると亡くなることもあります。とくに高齢の方は、そのリスクが高いのです」。
6月に導入して以降、19例で同システムを使用。その多くが総胆管結石の困難症例だ。「なかには結石の大きさが2㎝を超える例もありました。治療は点滴で静脈から麻酔を注入し、半分意識があるくらいのなかで行います。砕いた石は泥のようになり、それを取り除きます」と山本部長。
胆管がんの進展度を診るためにも使用している。「病変部を視認しながら検体を採取できるため、より正確な診断ができるとともに、外科手術を行う際の切離範囲をより正確に決められます」と山本部長はメリットを強調。
目的に応じて活用今後の発展に期待
今のところ、問題なく症例ごとの目的に応じて活用できているという。「困難症例に対応するためのツールとしてスパイグラスDSは非常に有用。渡部和巨院長をはじめ、徳洲会グループに感謝しています」と山本部長は謝意を示し、「近い将来、胆管のさらに末梢(まっしょう)まで診られるようになると思います。そうなれば、患者さんのために、もっとできることが増えていくでしょう」と期待している。徳洲会グループ病院では、すでに湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、岸和田徳洲会病院(大阪府)が導入している。